働かなくては

「仕事しなきゃ、俺だけ働いていない」、と息子が言います。
引きこもりの子供が働くと言葉で言う意味を母親は分かってきたので、
「働かなくて善い」と、母親が言うと、息子は激怒します。
今までも何回か働こうとして働けませんでした。息子の本心では働けないのを、母親は分かっています。息子は働けないのに、母親から働かなくて良いと言われると激怒するのはなぜなのでしょうか?

<解説>
一般には認められていないことなのですが、心には三つの心があることを、今までも説明をしてきました。それは意識の心と習慣の心と情動の心です。
意識の心とは持っている知識から言葉にして表現します。つまり息子さんは知識として、息子さんの年齢では働かなければならないという知識をしっかりと持っています。知識の心は言葉で表現できますから、言葉として「働かなくてはならない」と言う事が出来ます。心が辛くない大人では、「働かなくてはならない」という知識から、その人なりに工夫をして働きます。この知識の心は多くの人で理解可能です。
その際に情動の心は給料が貰える、他の人から仕事を認めて貰えると言うことが、喜びとして表現されます。知識の心が主として機能をして、情動の心の反応の喜びは、意識の心の「働かなくては」という思いを、納得という形で新たに意識することになります。
情動の心とは、感情の心とも表現し間違いない場合があります。息子さんは情動の心で、学校や仕事に強い辛さを感じて、その辛さからの回避行動として、学校や仕事を強く拒否しています。しかし情動の心の内容は意識に上りません。息子さん自身も直接気づくことが出来ません。
息子さんの情動は、意識の心で学校や仕事を意識すると、情動の心が強く反応をして、体中に辛さを表現します。体が学校や仕事に向かって動かなくなります。息子さんが学校に向かって体を動かそうとしても、体が動かないのです。動かないのですから学校や仕事に向かって動けません。
息子さんは自分の体が辛い症状を出していることを意識の心で気づくことが出来ます。自分の体が学校や仕事に向かって動かないことも、意識の心で気づくことが出来ます。そのことに気づいても、情動心がとても強く機能をすると、意識の心ではどうにも出来ないのです。情動の心の反応が強すぎて、意識の心ではどうにも出来ないのです。
息子さんは「働かなくてはならない」と強く思っています。思っても体が動かないのですから、自分がおかしいと意識するようになり、つまり「葛藤状態」になります。葛藤状態とは死ぬほど辛い状態ですから、それだけでも辛さを表現しているでしょうが、何かのきっかけでその辛さを爆発的に表現してしまいます。

御母様の「働かなくて良い」という言葉は、息子さんの意識の心にある「働かなくてはならない」という知識を完全否定することになります。そこで葛藤状態で辛い息子さんの心が、何かあればその辛さを爆発的に表現しようとしている息子さんが、息子さんの知識の「働かなければならない」が母親の「働かなくて良い」で否定されたので、爆発的に荒れることになります。一見爆弾に火を付けて爆発させたようになります。

続く