よい子を演じる(1)

中学生まで不登校だった息子です。すっかり元気になり、家庭生活は全く普通で、息子の意思で、高校は通信高校に進学しました。ある日、警察から母親に電話が来て、息子が万引で捕まっているから、引き取りに来て欲しいとことでした。その母親との会話です。

>何故、息子は万引きをしたのでしょうか?
学校に反応をして子供を辛くするトラウマ=FCRの反応に耐えきれなくなって、万引きという問題行動をしたのです。

>息子は不登校から回復して、全く普通の子どもに戻りました。高校も自分から行きたいと言うことでした。それでも母親は学校に行かないで家で楽しいことをして居て欲しいと言い続けました。それでも息子は自分で高校を選択して、受験をして、入学しました。学校には元気で通学していたのです。
この姿から、息子の心が辛い状態だと言うことを理解できる人は居ないでしょう。親から見たら、普通の大人から見たら、息子はとてもよい子の姿なのです。それでいて、息子は万引きという親が一番嫌がることの一つをしてしまいました。

多くの大人は息子の万引きと不登校とを結びつけることができないと思います。ですから、何故息子は万引きしたの?と息子に問いただすことになります。けれど息子もなぜだか分からないのです。発作的に万引きをしてしまっているのです。

人もほ乳類に属する動物です。心が辛いと、その心を辛くする物から逃げます。逃げられない時には、その心を辛くする物に攻撃をします。その攻撃の仕方はその辛くする物を破壊しようとするか、又はその場を繕ってその場から逃げ出して、別の場所でその心を辛くする物が困るような、嫌がるような、問題行動をします。

ところが人間だけは、他のほ乳類と異なって知識を持っています。その心を辛くする物から逃げ出せた経験がある人は、その時の知識を利用して、その辛くする物から逃げようとします。その知識とは、その辛くする物から過去の経験から得た知識で全てうまく丸く収めて、その辛くする物に関連する人を安心させて、その場から逃げ出してしまうのです。そしてその後で、それもある時間後の場合もありますし、何日か後の場合もありますし、場合によっては何年か後になることもありますが、その辛くする物に関連する人、その人が属する社会に対して、問題行動をしてしまいます。それが犯罪行動と理解されることも多いです。

このような心を辛くする物から逃げる方法、その姿はとても好ましい子どもの姿、人間の姿に見える姿=よい子で、その辛くする物から逃げた後に、その後でその辛くする物に関連する人、その人が属する社会に問題行動をすることを、よい子を演じる(人によっては仮面をかぶるという人も居ます)と言います。

このよい子を演じると言う、辛さからの回避法に気づいている人は少ないです。研究者の中にも殆どいません。外国にはこの概念はないと思います。ですから、不登校の子供の親を含めて、多くの大人が理解できないのはよく分かります。