「引きこもり」支援者に根強い“引き出せばいい”という錯覚の罪 9

>● 「そのままでいいんだよ」 で本当にいいのか
> 「引きこもりは家から外に引き出すべき」
>  いまだに親や支援者の間には、そんな錯覚が根強く残る。

 

 

ここで少しだけ脳科学を用います。

 


人間の行動は、意識行動、習慣行動、情動行動の三つがあります。引きこもりの大人には意識行動として、引きこもっていてはいけない、社会に出なくてはならないと言う知識から行動をしようとすることだけを考えれば良いです。習慣行動は引きこもりの問題には殆ど意味がありません。一番大きな影響を与えるのは情動行動です。情動行動には接近系の行動と回避系の行動とがあります。情動に接近系と回避系が同時に存在するときは、互いに相殺して、その差の分が情動行動として表現されます。

 


多くの引きこもりでは、接近系(心のエネルギー)はとても弱いです。ゲームのソフトが欲しいとか、課金が欲しいとか(意識には上りますが)ぐらいです。回避系としては自己否定です。此は強力でその人を引きこもらす原因です。

引きこもって家から出ない大人は、自己否定が強くて、家の外にあるその大人を否定する物に強く反応をして家の外に出られません。その大人は「引きこもってはいけない、社会参加をしなくてはならない」という知識を持っています。その知識と現実に引きこもっているという事実から、葛藤状態になりますます自己否定を強めて行ってしまいます。引きこもりの解決はありません。

 


引きこもっている大人でも、家の中で享楽的な遊びをして自己否定を忘れていられると、母親から引きこもりを認められて(この影響が一番大きい)、自分で自分の引きこもりを否定しなくなると、辛さが軽減してきます。否定されることへの反応が弱くなっていると、楽しいことを求めようとする接近系が自己否定の回避系より強くなり、楽しいことを求めようとする時だけ家の外に出られるようになります。

 


家の外に出ることでその大人の人の否定に晒され続けています。それでも何かをしたいという接近系が勝っていますから、その何かをしたいという接近系がある限り、家の外にいることが出来ます。然し何かその大人を否定する物があると、すぐに家に戻り引きこもってしまいます。ニートと言われる大人の姿です。