トラウマについて(5)

子どもの心が辛くなる原因は全て恐怖の条件刺激を学習することで生じています。これを平易な言葉で言うと、「嫌なことを経験したから」です。嫌なことには色々な程度があり、ちょっとした嫌なことから、とても嫌なこと、死にたくなるほど嫌なことなど、その程度は色々ですが、心の中では、脳の神経生理の上での仕組みで言うなら、全て恐怖の条件刺激の学習をしています。この事実に世界中の人が気づいていないのです。

ちょっとした嫌なことなどは、時間の経過やその後の嬉しいことで帳消しになってしまいます。其れ以外の嫌なことは、前回のトラウマについて(4)で述べました。ちょっとした嫌なことなら、具体的にそれが何からない場合が多いのですが、その恐怖の条件刺激は日常生活の中にありますから、その日常生活の中で楽しいことがあると、その日常生活の中にある恐怖の条件刺激は楽しさの条件刺激に逆条件付けられてしまいます。問題なくなってしまいます。感覚的な表現をしますと、何か性格の異常を感じる子どもには、日常生活をその子どもにとって楽しくして上げることで、その問題が解決します。常識的に考えると、その性格の異常を矯正する(例えば子どもを叱る)ことを考えますが、それはその場限りでその後その性格の異常を強めてしまいます(逆行動の法則)。

ところがトラウマと表現されるような、とても強い辛さを生じるような嫌なこと、恐怖の条件反射では(例えば不登校分類3の子ども)、その恐怖の条件刺激が存在しているだけで生きていけません。動物実験のように逆条件付けをすることが出来ません。それ故に、トラウマがある人は、トラウマが反応をしないところで(恐怖の条件刺激が無いところで)成長をして、トラウマの反応が弱まるのを待つ必要があります。より早くトラウマの反応を弱めるために楽しいこと(享楽的な遊びにその効果が大きいです)に没頭する必要があります。しつけとか健康とかを考える前に、トラウマの反応を弱めることが最優先します。

トラウマが長く反応をしないで心が楽になった子どもでは、子供の本能が機能をし出します。享楽的な遊び以外に何かを求めて動き出すことが出来ます。その何かを求めて動き出す喜びが大きくなると、弱まってきたトラウマの辛さ以上になってきたとき、子どもは今までトラウマで苦しんできたことや場所でその子どもなりの活動が可能になります。トラウマが反応をしない状態になった子どもは、トラウマがなくなったと考えて生活が成長が可能になります。大人の場合この本能の機能が弱いので、トラウマの解決が子どもほどできません。解決が大変に難しいです。