トラウマについて(3)

子どもAの性格は
1)その時までにAが生活の中で繰り返すことで身につけた習慣行動
2)本能と、母親から受け継いだ情動、その時までに学習し身につけた条件反応
です。その子どもAがある人、又はある出来事Bで、その心がとても辛い状態(痛い、怖い、辛い、嫌だ等の言葉で表される心の状態)になったとします。その際にAはBに、そしてBの周囲にある物に、恐怖の条件刺激を学習します。其れ以後BやBの周囲にあった物を見たり、思い出すだけでAの心はとても辛い状態になります。その恐怖の条件刺激の強さは、AがBにとってどれだけ辛かったかによって決まってきます。つまり性格の変化を来します。Aの周囲の人も、Aの性格が変わったと理解するようになります。

それでもAが身につけた恐怖の条件刺激が弱かったら、時間経過(人により、条件刺激の強さにより異なりますが)と伴に弱まり消失してしまいます。また、恐怖の条件反応が起きても、母親などからのAにとって楽しい、嬉しい、対応を受けると、この恐怖の条件反応は弱まりますし、消失を促進します。それに対してこの恐怖の条件反応を繰り返すことで、この恐怖の条件反応は強まり(とても強くなった場合の恐怖の条件反射、反応をトラウマと言うようです)、消失しにくくなります。周囲の人から見たら、原因が分からないけれど、Aの性格が好ましくない方向に変化をしたと感じられるようになります。

子どもが思春期を迎える頃から生じる反抗期と呼ばれる時期があります。その時の子供の心の状態は、この学習した恐怖の条件反射が機能をして生じています。つまり、親が子どもに恐怖の条件刺激(親が子どものために子どもに与えたこと、要求したことで、子どもの心が辛くなったとき、親が子どもに与えた物や要求や、親や親の周囲にあった物に恐怖の条件刺激を学習します)を与えていることから、子供の方で恐怖の条件反射を生じて、親にとって、社会にとって問題行動をしています。

勿論親は子どもを辛い思いにしようとして恐怖の条件刺激を与えているのではありません。多くの場合、この恐怖の条件刺激は子どもにとって何も影響が無いか、必要な物か、楽しい物が多いので、親は子どものためにと思って与えているのですから、子どもが恐怖の条件反射(それが強い場合にはトラウマ)を起こしていることを理解できないのです。この親の思いに反する子どもの姿を親や多くの大人は理解できません。それ故に子どものためにと親が思って、繰り返しこの恐怖の条件刺激を与え続けることで、子どもの問題行動が強まっていきます。子どもが親に、社会に、反抗をしていると理解してしまうのです。

しかし親や社会は子どもの心に恐怖の条件反射を生じて、子どもが親に向かって、社会に向かって問題行動をしているとは理解しないのです。子どもの性格を矯正する必要があると考えています。法律、社会の仕組みも、その様に出来ています(医療や矯正機関)。それでは子どもの心にある恐怖の条件反射をなくすることは出来ません。しかし恐怖の条件刺激から子どもを遠ざけることが出来る場合が多いですから、一時的に子どもの問題行動がなくなる場合が多いようです。