代理母

真理子が私に会って、真理子の思いを聞いてほしいという情動からの情動行動だと思いました。真理子が意識をしていないけれど、話したいという情動行動を実現しようとするのに、親がわかる理由が必要だったから、走りたいと切り出したのとケーキも利用したのだと推測されます。もちろん真理子はこのことを私にも言葉にしていません。

この話を理解するには、真理子と叔母との関係を知る必要があります。不登校だった真理子は母親により強引に学校に行かされていました。毎日荒れていて、母親も手を焼いていました。学校に連れて行かれても、教室には入れないので、特別教室です。そのような真理子が家にいづらくなって叔母のところに逃げてきたことがありました。叔母は真理子をとてもかわいがっていましたから、真理子の話を聞き続けて、叔母の家で長い時間過ごすようになっていました。母親は学校に行かないで叔母の家で過ごす真理子を許せなかったのですが、叔母の家で過ごした後の真理子が荒れなくなったので、仕方なく許可をしていました。

真理子は叔母に学校での辛かったことを話し続けました。叔母はそれを共感して、真理子を抱きしめて、真理子が納得するまで話を聞き続けたのでした。そのような時間が1年以上続いた後、真理子は自分から教室に行くようになったのです。学校から帰ると叔母のところに行き、その日の出来事をいろいろと話して、時には夕食を食べて帰ることもありました。母親はこのような真理子の姿を好ましく思っていませんでしたが、真理子が荒れなくなったし、母親が希望するように学校に行くようになったので、黙認せざるを得なかったのです。それがしばらく続いた後、真理子はだんだん叔母のところにこなくなりました。真理子が叔母のところにこなくなってから2,3ヶ月たったときの話なのです。

真理子は学校での真理子の辛さを理解しないけれど、それでも母親を大好きです。真理子なりに学校とつきあって、学校での問題点を自分で解決して学校に向かっていました。しかし学校での問題が真理子の限界に達したとき、その思いを母親で無く叔母にぶつけたのです。真理子は自分の辛さを言葉にして叔母にぶつけて、真理子が納得するまで聞き続けてくれた叔母に満足して帰宅したという意味です。しかし真理子は母親がこの真理子の行動を許してくれないことを知っていましたから、真理子の目的を母親に気づかれないように家を出る必要があったのです。真理子の辛い思い(情動の回避系。接近系で埋め合わせようと無意識にします)を叔母で解消したいという欲求を、実現したい。その欲求が真理子の持っている記憶を機能させたのです。記憶を利用して行動をするのは意識行動です。真理子の心=脳が成長していて、情動に基づく意識行動が可能になっていたのです。その結果、叔母のところで辛い心をいやそうという行動に出ることができました。

この際に真理子は自分の感じていることを意識して、その意識に基づいて過去の記憶から叔母のところで辛い心をいやそうとしたのではありません。心の辛さを癒やさなければならないという情動=感情。その情動から過去の記憶を利用した意識行動になりましたが、その過去の記憶を利用して自分の辛さを解決しようと、いろいろと考えて行動をしたのではありません。真理子は真理子なりの自然な流れて、叔母のところに行くには母親が納得する理由で家を出なければならない、そこでランニングを思いつきました。それだけでは叔母の家に行けません、。そこで作ったケーキを叔母のところに持っていくということを思いついたのです。

これらの真理子の行動の大本は、学校での辛さを叔母に話すことで解消したいという情動です。その情動から全て誘発された行動です。記憶を利用していますが、思考を利用していません。それ故に全体の真理子の行動は情動からの行動、情動行動です。

なぜ真理子にこのような情動行動をさせたかという理由があります。もちろん真理子はその理由を考えたのでは無くて、真理子が自分の辛い心をいやそうとする情動を本来なら真理子の母親で解消しようとするのが、母親と子供との関係です。しかし母親はそれをしてくれませんでした。しかし真理子には自分の母親に代わる母親を知っていたのです。 「母親に不足部分を他の人に求めてもそれが許される人、代理母」 の存在を認識していないけれど、しっかりと記憶していたのです。

 


真理子の家を出るための理由としてランニングを持ち出し、私の家に行く理由として、ケーキを持っていくことを思いついたのでしょう。その思いつきが功を奏して、真理子は我が家にきて、学校でのお勉強の辛さを延々と述べてました。そこにはケーキを作った話、ランニングを楽しんだ話は全くありませんでした。

後から電話で聞いたのですが、真理子の行動は親によって、常識的な理由付けがなされました。その利理由付けとは、不登校だった真理子が元気になってきて、運動を開始しようとしたこと、真理子なりに上手にケーキを焼いたのでそれを見せたかったと言うことでした。

私が見る限り、真理子の行動はとても単純です。勉強での辛い思いを私に聞いてほしかっただけでした。ランニングやケーキ作りの話はほんのわずかで、明らかに真理子がしたかった物では無かったと思います。真理子はただ単に、自分の辛さを私に聞いてほしかっただけ、話すことで楽になりたかっただけだと推測されます。本来なら母親に話したかったのでしょうが、真理子は母親がこのような話に聞く耳を持っていないことを知っていたのでしょう。

真理子は叔母である私のところに来ることを特別な理由がない限り許されていません。今回はランニングをすること、ケーキを持っていくことの、二つの理由から許されました。母親はこの二つの理由から許可を出しましたが、真理子はわき上がる情動行動、私に学校での辛い勉強のことを話したいという母親には理解できない思いを実現するために、母親にはそれは言葉にしないで、母親が理解可能なランニングとケーキを持っていく話を持ち出したのだと推測されます。

きっと母親は真理子の心を理解していると判断しているでしょうが、真理子の本心と異なる真理子が言う理由の部分は理解できても、真理子の本心、学校の勉強が辛いことを言いたいという思いは全く理解できていないし、真理子も今までの経験から、母親に真理子の勉強に対する思いを言えないことを感じ取っているのでしょう。