PTSD

>トラウマ系発達障害は、PTSD心的外傷後ストレス障害)とも異なるのでしょうか。
PTSD=トラウマと考えて良いです。
PTSDとは死ぬような強い恐怖状態で、トラウマ状態になった場合のようです。PTSDもトラウマですから、きっかけは死ぬような強い恐怖状態で、トラウマを反応をさせるような、恐怖を生じるような原因を学習しています。しかしトラウマと同じで、PTSDを反応をさせる原因が普通の人では何でもない物、些細な物なので、周囲の人も当人も、それがPTSDを反応をさせる物だと気づかない、認識しないだけです。

実際にあった例ですが、東日本大震災の際に死ぬような思いを経験した人が、その時存在していた聞こえるか聞こえないぐらいの低音をPTSDを反応をさせる物として学習してしまった人が放送されていました。当人やその治療に当たっていた人たちは当人が死ぬような思いをして突然とても強い不安や恐怖を感じるのを観察しています。その時そのPTSDと診断された人は、聞こえるか聞こえないぐらいの音を聞くと不安になるというように言葉で表現していましたが、その事実は無視されて、ふとしたきっかけで記憶がよみがえるフラッシュバックが起こっていると理解されていました。つまりこのPTSDと診断された人は、他の人では全く問題ない、聞こえるか聞こえないぐらいの低音に反応をして恐怖反応を起こしていたのです。

PTSDの場合は、このトラウマが“1回だけの出来事”によるものになります。怖い体験を思い出すのはつらいので、思い起こさせる行動を回避するようになりますが、
ここで私たちの発想を変える必要があることがあります。それは上記のPTSDの症例では、死ぬ思いをした大地震、その辛い経験がPTSDの反応症状を出すのではなくて、辛い経験の際に存在した、聞こえるか聞こえないぐらいの低音を思い出して、または身の回りの音の中から感じ取って、PTSDが反応をしていたのです。それ故に多くの専門家も、当人も、何故PTSDを持っている人が辛くなるのか理解できないのです。

>一方、虐待のように長期にわたって何度も繰り返される反復性のトラウマは、いつ暴力が降りかかってくるのか、つねに緊張の中で過ごすことになります。
虐待による苦しみがトラウマを作ります。しかし虐待自体がトラウマを反応をさせるのではなくて、虐待に関係した相手とか、物とかでトラウマが反応をするようになります。

>それは過覚醒状態が続くということ。すると、感情のレギュレーション機能が壊れ、激しい気分変動が起こります。さらに、自分は価値がないと感じたり、人への信頼関係が壊れてしまうのです。
トラウマが反応をすると、そしてそのトラウマを反応をさせる物から逃げられないと、トラウマを持っている人はあらゆる心の病の症状の何かを出す可能性があります。それは虐待を受けた人、トラウマを持っている人によって異なります。

>ICD-11(国際疾病分類第11回改訂版)では、先ほどお話ししたPTSDの3症状(過覚醒・フラッシュバック、回避)に「気分の上下・無価値感・他者への信頼の崩壊」の3症状を加えたものを、複雑性PTSD(Complex post-trauma stress disorder)としています。複雑性PTSDではフラッシュバックがいつでもどこでも起こります。そして、複雑性PTSDは子どもへの虐待で多く発症しています。

複雑性PTSDにはどのような治療が行われるのでしょうか。複雑性PTSDのフラッシュバックはいつでもどこでも起こりますから、まずはそれに対する治療が必要です。しかし、フラッシュバックがあると一般的なカウンセリングがうまくいきません。というのも、一般的なカウンセリングの基本は傾聴と共感ですから、これをやるとフラッシュバックの蓋があいてしまい収拾がつかなくなって悪化してしまうのです。
PTSDを持ってしまった辛かった状況の再経験となります。その意味では治療になりませんが、その際経験がPTSDを反応をさせる可能性は極めて低いです。

>子どもによく行われるプレイセラピーも同様で、私はほぼ禁忌と考えています。治療は続くものの臨床的にどんどん悪くなり、そのうちに子どもが嫌がるようになって中断するケースがものすごく多いですね。
子供の場合、辛い出来事の再経験は新たなトラウマを反応させる物を身につけてしまいますから、禁忌です。

>トラウマへの対応では一般的なカウンセリングやプレイセラピーが無効なので、フラッシュバックを起こさないための精神療法が開発されています。それが「トラウマ処理」です。
トラウマの解消法は、トラウマが反応をしない時間を長く作って(多くは何ヶ月も)、トラウマの反応を弱くすること、最終的になくすることが基本です。但し子供の場合トラウマの反応の辛さ以上に楽しいことをして居るとトラウマの辛さと楽しさとが相殺されて、見かけ上トラウマがなくなったように生活が、成長が可能です。