トラウマ(2)

新生児は本能だけを持って生まれてきています。その本能から母親との関わりで成長を始め、母親の情動(感情)の仕組みをコピーして、幼児期にはその子どもなりの情動の基本が出来ていて、基本的に一生続きます。その情動(感情)の仕組みを変えるのが条件反射です。子どもの成長を促進する条件反射の例として、パブロフの犬の実験(情動の接近系の条件反射)があります。子どもの成長を阻害する、危険から子どもを守る条件反射が恐怖の条件反射(情動の回避系の条件反射)です。人間では、この情動の回避系の条件反射のことを、条件反射が生命に異常を生じない程度の場合を性格の変化(性格が変わった、~が怖くなったと言う状態)、生命の異常を生じる可能性がある場合をトラウマと呼びます。

子どもを危険から守るために恐怖の条件反射の学習はとても大切なことで、これがあるから種の保存が出来ていますし、種の進化が種の中に生じます。つまり恐怖の条件反射を学べなかった個体は、その恐怖に出くわしたときに死滅していまいます。ところが人間では恐怖の条件反射を学習しても、他の人に命は守られて死ぬことは少ないです。その様な人は恐怖に出くわしたときに、程度の差はありますが、辛くなる、怖くなる、嫌になる、等の性格の程度から、原因不明の問題行動、暴力などの荒れ、精神疾患になってしまいます。

つまり、目の前の自分の子どもの性格とは(子どもの場合、子ども発する言葉は子供の持っている知識であり、それにより行動が基本的に出来ませんから、性格に入れません)大きく分けて
1)その時まで身につけた習慣行動
2)本能、母親から受け継いだ情動、その時までに学習し身につけた条件反応
普段の生活では、このそれぞれの要素を考える必要はありません。子どもの性格で何時もはこうだと言う考え方で良いですし、それしか出来ません。

その時までに学習し身につけた条件反射がトラウマだった場合でも、トラウマが反応をする原因(恐怖の条件反射が生じる条件刺激)がない場合には、トラウマが反応する子どもでも、トラウマが反応をしない限り、トラウマがない子どもと考えて対応が出来ます。それ故に、トラウマがある子どもでは、ひとたびトラウマが反応をすると、その反応はとても強力で、子どもの心の全てを支配(荒れる、問題行動をする、心の病の症状を出す)して、子どもの其れ以外の性格は全く機能できなくなります。子どもの姿は、トラウマの反応だけが全てになり、トラウマから生じるその反応が心を全てを支配してしまいます。子供としての成長が出来なくなります。ですからトラウマを持っている子供は、トラウマが無い環境下で成長をして貰う必要があります(不登校の子供では登校刺激が全くない状態で成長して貰う必要があります)。