トラウマは強まる

「トラウマの例」の杉山先生は、光男君以外の子ども達にとって恐怖刺激ではありません。ですから杉山先生を見ても恐怖反応を起こしません。ところが光男君は杉山先生から酷く叱られた経験(光男君の記憶に残っていないことが多いです)から、反射的に杉山先生を見るとどことなく怖い思いがわいてきて、杉山先生を避けます。つまり、光男君にとって杉山先生は恐怖刺激なのですが、何かの理由で、例えば杉山先生は良い先生だという噂などで、光男君は杉山先生を自分を怖い思いをさせている恐怖刺激とは理解していません。

ここで殆どの人は知らないことなのですが、恐怖刺激には相乗効果があります。弱い恐怖刺激でも繰り返されている内にだんだん恐怖刺激としての効果が強まっていきます。光男君は杉山先生を見ることで、どことなく怖い思いがわいてきていたのですが、それが繰り返されることで、その怖い思いが強まっていきます。最終的に、光男君は杉山先生にとても怖い思いをするようになりますが、光男君はその怖い思いの原因が杉山先生と気づかないのです。最終的に光男君は杉山先生を見たとき、熊か、お化けに出くわしたような恐怖を感じるようになってしまいます。それでもその原因が杉山先生と光男君は気づかないのです。

恐怖反応もトラウマの反応も、脳の中では同じ様な神経回路を経て生じています。恐怖反応の場合、恐怖の原因を認識できますが、トラウマの場合には恐怖の原因を認識しません。ここが恐怖反応とトラウマの反応と、違う点です。恐怖反応では恐怖の原因を認識しますから、その恐怖の原因を避けることが出来ます。恐怖を生じないように出来ます。ところがトラウマの場合、恐怖の原因を認識しませんから、恐怖の原因を避けられません。何回も恐怖の原因に晒され続けて、そのたびに恐怖を生じます。その恐怖から逃げることが出来ません。

光男君の場合、杉山先生で光男君のトラウマ(杉山先生を恐怖の原因とする恐怖反応)が反応をし続けて学校に行かれなくなった場合、それは不登校分類2になります。光男君が杉山先生と関わる必要がなくなったら、つまり杉山先生が学校に居なくなったら、光男君は杉山先生の居なくなった学校に行かれるようになります。